Elysium Web 1999 7.Feb. → 2003 24.Feb

トロイの木馬 について

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 とりあえずこの仮ページを用意しました。前に少し書いたように、木馬が登場するトロイア戦争は、ギリシア叙事詩その他で書かれた大きな物語で、木馬登場の細かい状況から話そうとすると大変なため、木馬に関する事柄だけ必要最小限に触れます。
(追記:トリピオドーロス著『トロイア落城』に基き、木馬建造の様子を詳しくしました。2003/2/24)

 ギリシア諸国と、現在のトルコ北西のトロイアの十年戦争には、両陣営に大勢の英雄達と神々が参加しましたが、決着がつきませんでした。
 ギリシア側の将オデュッセウスは、同じくギリシアを応援する知恵女神アテナによって、戦争終結の鍵になる木馬の建造に着手します。

 設計と建造監督はエーペイオス。イーデー山から伐り出した木材で、当時の船を造るように、丸く反った広い肋材にはめ込まれた胴をこしらえます。そして、筒形の白い首に頭を載せて、黄金のラメをまぶした、ふわりと波打つ真紅のたてがみで飾りつけます。眼は、紫水晶を埋め込んだ海緑色の緑柱石です。
 上下の顎には真っ白な歯を埋めて、銀箔の象牙と青銅のハミを噛ませ、巨大な口と鼻に通風孔を開け、こめかみの上端にピンと立った耳を取り付けます。つぎに、背中と脊柱を胴にかぶせ、腰を尻につなぎ合わせます。尾は伸びやかにたわんで足元まで垂れ、駆け出しそうな足の蹄は、青銅で造られ、地面にはわずかに触れていません。

 かくし扉が脇腹にはめられ、解かれるとしっかり繋がる梯子もかけられ、足に車輪が取り付けられた木馬のなかには、歴戦の英雄二十一名とエーペイオスが潜み、残るギリシア全軍は船に乗り沖へ退きました。
 その朝、ギリシア連合軍が欠き消えたのを知ったトロイアの人々は喜び、堅牢な城郭の門を開き外へ出、木馬を発見します。その処置に三通りの意見が出ました。

 1.木馬の腹を諸刃の斧で叩き壊す
 2.深い断崖の縁に持っていき、落とす
 3.アテナへの奉納品として扱う

 三番目の意見が採られ、慎重を促した家老ラオコーンや、いつも正確に予言するのに決して信じて貰えない、トロイアの姫カッサンドラの声も空しく、木馬に潜むギリシア軍精鋭は遂に不壊の城郭をくぐります。終戦の喜びに湧く饗宴の夜、木馬の腹から抜け出した精鋭達は、夜襲作戦開始の合図のたいまつを燃やし、城塞の門番を殺して門を開けます。上陸したギリシア軍は一気に強襲し、その後七年も燃え続けた、落城の炎が点けられました。


 実際はいくつもの話が絡み込む、より重厚なクライマックスなんです。ですからもし、更に興味をそそられた時は、ギリシア二大叙事詩『イリアス』と『オデュッセイア』、あるいはその二作品についての本を読んでみるといいと思います。
イリアスは、アキレウスを主人公にしたもので、戦争十年目のある日から回想が入りつつ、ライバルのヘクトルが死ぬまでの話、オデュッセイアは、オデュッセウスが戦地から帰国するまでの話です。

 この解説は、四世紀にエジプトのパノポリス出身のトリピオドーロスという詩人が残した『イーリオン占領(トロイア落城)』にもとづいています。
 というのは、木馬のエピソードは他の現存する作品では、ワンシーンずつ触れてあるだけで、話としてまとまっている作品は、これだけなのです。(厳密には、十行足らずで触れた作品が他に二つあります)

 はしょっていますが、読みやすい本を挙げると『トロイア戦争物語』が、いろんな本からトロイア戦争の話をひとまとめにしています。(このページで挙げた本は参考文献のページで紹介しています)
 木馬について書いたページを挙げるより、と思ってこんな仕掛けをしておきました。「押す」を押してみてください。
(追記:プログラムウィルスの記事を除き、Infoseekが検索します)
(追記2:検索アクションを封鎖しました。動作をとりやめます)



 この木馬のエピソードは、絵画彫刻でも多くモチーフにされています。さっき書いたラオコーンを主題にしたものでも、ヴァチカン美術館所蔵のラオコーン像や、エル・グレコの作品があります。
また「一見役立ちそうなプログラムに隠された、悪さをするプログラム断片」を、トロイの木馬 と呼びます。